電話越しのキス

『逢いに行けなくてごめん
from G』



そんなメールが届いたのは一週間ほど前のこと。
バレンタインだからと言って、人気俳優のジソブがお休みを取れるはずもなく、きっと新作のドラマの準備でてんてこ舞いだろう。


初夏にオンエアされるこのドラマ、大分内容は重いものになるだろう事は予想がつく。
でもジソブだからこそ、やりがいを見出してオファーを受けたに違いない。


『ドラマ期待してるからね。
お仕事頑張って!でも無理はしないでね。
From


簡単に読めるように。
でも想いは伝わるように願ってメールを返す。





バレンタインの日は撮影があるのかもしれないし…どうしようかな?


バレンタインのプレゼントをどうしようか迷ってただが、暫く考えて今回は一ファンとして51宛てで送ることにした。


きっと、私の贈ったプレゼントも沢山の贈り物に混ざってるんだろうな。
皆がジソブを応援する気持ちに私の気持ちもプラスして、ドラマの成功とジソブが頑張れるパワーになるといいな。


そんなことを思いながら迎えたバレンタイン当日。


いつも通り職場でチョコレートを配り、いつも通りの仕事をこなす。
極自然に過ぎていく一日の中で、時折ジソブの顔が脳裏を過ぎった。


今頃なにしてるのかな?
この間怪我したって言ってたし…
大丈夫かな

きっと寒いよね
風邪引かずに頑張ってくれると良いな


想い続けても仕方ない事も分かってるので、頭を切り替えて仕事に戻る。
極普通の一日を厳密に真似て、その日の仕事は終了した。





やっと自宅に戻る。悴んだ手を擦りながらヒーターをつけた。


「ふぅ!寒かったぁ!
とりあえず、一息つこっと…」


手早くシャワーを済ませ、ホームウェアに着替えてソファーにコロンと転がる。
ぼんやりと天井を見上げながら、またジソブの顔が浮かんでしまう。


もぉ…
私の頭の中のどこにでも貴方は潜んでるんだから…


笑顔の彼を思い出しながら、溜め息を吐く。


今日は、コーヒーじゃなくてホットチョコレートにしようかな…
いつもバレンタインにジソブに作ってあげていたホットチョコレート。
今年はジソブを考えながら一人で飲む。



フワフワのクリームに、ふーっと息を吹きかけると、甘みを帯びた香りが漂った。



lu lu lu lu lu…


俄かに響く電話のベルの音に驚く。


「こんな時間に誰?」


普段あまりもつことのない受話器をとると…


『もしもし?
俺だけど…』

「え? ジソブなの? どうして?」

『どうしてって…声聴きたかったから…
いまダメだった?』

「ううん。
大丈夫……」


驚きと嬉しさで、次の言葉が出てこない。
普段電話なんて滅多にかけてこない。
用事があれば短いメールのみでの連絡ばかり。
だから、正直、ジソブからの電話に戸惑いとドキドキが入り混じった。


暫く他愛もない話をしていると、聞き辛そうにジソブが話を切り出した。


…』

「なぁに?」

『あのさ…その… バレンタインの…事だけど…
今年は… その…』

「あ!
その様子だとまだみてないのね?
今年はロケ中で家にいないかもと思って、事務所宛に送ったの♪」

『え? あ… そうなの?
今日事務所行けなかったからな…
なんだ… はは… そうきたか…』

「え?何?」


少し落ち着きを取り戻したようなジソブの声が受話器越しに聴こえる。


「もしもし? 
ジソブ、大丈夫?」




『うん…大丈夫だよ。
いつもカードとかプレゼントとかあるのにどうしたのかなと思って…
あ、別にものが欲しい訳じゃなくてさ…
もしかして…その… 
嫌われたのかなって心配になったんだ』


「そ、そんなことあるわけないでしょう?」


『そうだよね…
でもやっぱり一緒に居られないからさ…
心配になるときもあるんだよ』


段々と小さくなる声に愛しさがこみ上げてくる。


「ジソブ…」

『なに…?』

「今度事務所に行ったら、沢山のプレゼントの山の中から私のプレゼント見つけてね?」

『うん』

「ピンク色のいつものラッピングで送ったから」

『うん』

「撮影大変だろうけど、風邪ひかないようにあったくしてね?」

『うん』


「それから…」

『うん?』

「大好き!」


ちゅっ!



『えっ!?』


電話越しのキス…


動揺したようなジソブの声に、は思わず噴出しそうになった。
きっと照れて首まで真っ赤に染まってるだろう。


電話でよかった…
目の前にいたらこんな風にできないもの


電話のこちらにも真っ赤になったがいた。





********





翌日…
死に物狂いで発送物の山と格闘するジソブの姿があった…


『…見つけたよ。勿論自分ひとりでね。
可愛くラッピングされた大量のカイロありがとう。
 
ありがたく使わせてもらうよ。
でも…
来年からやっぱり自宅に送って? from G』


そんなメールが届いたのは、月が空に高く上がった頃だった。





END




…あとがき…

昨年のバレンタインは
姉妹ブログの仲間と共に
どきどきしながらメッセージを送った覚えが…。
今年はちょっと多忙につき
直接プレゼントは贈ってませんが
心だけはジソブさんのところにすっ飛んでいってます!


夜叉様(あっ ジソブさんか…)御用達、ホットチョコレートのレシピ

<材料>
〜ホットチョコレート〜グラス1杯分
牛乳 150cc
ゴディバチョコレート ビター72% 45g
グランマニエ 小さじ1
ホイップクリーム 適宜

<作り方>
@ 鍋に牛乳と刻んだチョコレートを入れ中火にかけ、沸騰直前で火を止めよく混ぜる。
A @にグランマニエを加えカップに注ぎ、八分立てにホィップした生クリームを上にたっぷりのせる。




2010.02.14

from  AKI @AIR ON G-STRING



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